12奥山 倫行 氏 第2章 弁護士【アンビシャス総合法律事務所 パートナー】

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奥山 倫行 氏


アンビシャス総合法律事務所
http://ambitious.gr.jp/
パートナー

略歴
札幌南高校出身
慶應義塾大学院在学中に司法試験に合格
2002年 国内の大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に勤務
同事務所で、企業法務、事業再生、会社法関連訴訟、知的財産関連業務、M&A等の業務に従事
2007年 故郷である札幌にて安藤誠悟弁護士とともにアンビシャス総合法律事務所を設立
企業法務を中心としたリーガルサポートを行っている

著書
「弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール」
「弁護士に学ぶ!クレーム対応のゴールデンルール」
「成功する!M&Aのゴールデンルール」
(いずれも民事法研究会)
ほか


 

 


 

6.北海道での仕事のやりがい

 

弁護士の仕事をしていて、最もやりがいを感じるのは、クライアントから感謝されたときです。

東京で働いていたときは、大きな事件を複数の人数で担当していました。大企業がクライアントですから、当然クライアント側も、社長が自らその案件を担当することはなく、法務部の方々が担当者として出てこられます。

そうすると、良い仕事をしたとき、法務部の担当者の方々とは苦労を共有できていますから、一緒に喜んでくれるものの、組織全体として喜んでくれるわけではないような感じを受けました。

 

ところが、今はクライアントの殆どは中小企業です。

そして中小企業では、社長イコール会社といった感じなので、各企業のトップと直接接して、トップとダイレクトに仕事をすることができます。

そうすると企業法務といっても、クライアントとの距離が近くて、良い仕事をしたときにはストレートに喜んで頂けますし、人と人の触れ合いの距離、感情の伝達する距離、そういった温度感が非常に近いので、それが日々のやりがいに繋がっている部分があると思います。

 

 

7.事務所経営

 

事務所の経営は、悩ましく、厄介な問題です(笑。

私は、もともと経営者になりたくて、弁護士を選んだわけではありません。

弁護士として自分の信念に基づいて、やりたいことをやりたいと考えたときに、自分たちで事務所も経営するしかないということで、やむを得ず経営をしなければならなくなったという経緯で、経営に携わっているに過ぎません。

 

今はそのような迷いは吹っ切れていますが、これまでも仲の良い社長と話をしていて、「弁護士の仕事だけをしていたいので、誰か事務所を経営してくれないかな・・・」とこぼしていた時期もあるくらいでした。

大学の法学部や、弁護士になる前に全員が入所する司法研修所では、弁護士になるために必要な知識は教育したり、トレーニングをしたりしてくれますが、経営者になるための知識やトレーニングは受けてきていませんので、悩ましいことばかりです。

弁護士としての仕事には自信がついてきても、経営者としての仕事には自信があるわけではないのです。

 

一概に「経営」と言っても、最初のころは分からないことばかりでしたし、戸惑いも多く、弁護士の業務とのバランスが難しいなと感じながら過していました。

例えば、今抱えている裁判の案件に全部負けてしまったら明日からまた仕事がなくなってしまうかもしれません。

個々の弁護士も今は事務所に所属してくれていますが、誰かが辞めてしまうと、日々ご依頼頂く案件に対応しきれるかどうか自信がありません。

特に、弁護士はそれぞれ資格を持っていますから、別にこの事務所が嫌なら他の事務所に所属すれば仕事をして生活していくことができます。

それでもこの事務所にいることで、自分たちの人生が幸せになると感じて貰えるような環境を提供し続けていくことは簡単なことではないと感じています。

 

ですので、スタッフに対してもそうですが、弁護士に対しても、所属するメンバー一人ひとりが生き生きとやりがいを感じて暮らしていける環境になっているかということはいつも考えています。

事務所の資源は、リーガルサービスであり、そのリーガルサービスを担えるのは「人」でしかありません。

その「人」が生き生きとして、幸せを感じながら暮らしていけているかということは、経営を担う立場の弁護士が、四六時中考えなければならないことだと思います。

だからと言って、甘やかして接するわけにもいきません。

私たちの仕事は、企業の命運や人の生き死にと常に隣合わせの仕事ですし、事務所としてもより高みを目指して知的難易度の高い専門領域への対応を志向している部分もありますので、厳しいことも伝えていかなければならない場面もあります。

厳しいことを伝えた後に、家に帰ると、「今日は伝え方が良くなかったかな・・・」とか「他の伝え方をした方が良かったかな・・・」とか、いつも、そんなことを考えながら、ずっと仕事や職場のことを考えながら過ごしています。

 

有り体に言えば、日々、悩み、孤独を感じながら、経営者としての役割を果たそうと頑張っているといったところでしょうか(笑。

いずれにしても、最先端の企業法務を旗印にして、ときには企業の存亡に直結する判断や対応を委ねられたり、企業の成長に関する新規事業についてのビジネスアイデアや、売上の拡大、利益の増加、社内統制の在り方、人材の採用や、人事制度の構築や人材の育成や組織の作り方などにも踏み込んでアドバイスをしたりしている弁護士の立場としては、自分自身が自分の法律事務所の経営に失敗するわけにはいきません。

むしろ毎年成長した姿を見て頂いて、事務所も勢力を拡大して成長気流に乗っていないと、日々のアドバイスの説得力の基盤が失われてしまいます。

「偉そうなこと言っている割に、先生の事務所は大したことないな」と受け止められてしまうと、存在の基盤も危うくなってしまうだろうと感じています。

逆に「確かに先生の事務所も成長しているな」と受け止められると、私のアドバイスに耳を傾けてくれる人も増えるかもしれません。

そういった意味での真剣勝負というか、余計なプレッシャーというか、そんなことを自分に課しながら、楽しみながら取り組んでいるといった状況です。

 

 

8.共同経営者への想い

 

アンビシャス総合法律事務所は、安藤弁護士と私の共同経営です。

これから他の弁護士もパートナーとして参画して貰うことができるようになれば、更に経営者が増えることになります。

このような形態は法律事務所としては珍しいことではなく、むしろ複数の弁護士が所属する法律事務所には多い従来型の形態です。

 

このような共同経営の場合には、悪い面もあれば、良い面もあります。悪い面は、意思決定のスピードが遅くなりがちなことですが、良い面は、自分以外の人の考え方を取り入れながら多角的な視点で経営できることです。

また、私は、さびしがり屋というか、常に誰かと接していたいと考えるタイプの人間なので、安藤弁護士が一緒に経営に携わってくれていることで、とても心強く、日々、安心感を得ています。

これまでも色々なことがありましたが、安藤弁護士がいるから、乗り越えることができたことばかりです。

そのような意味で、心から感謝しています。

 

私にしてみると、アンビシャス総合法律事務所があるのは、私の地元の札幌です。

親や兄弟も古くからの友達も、会おうと思えば、いつでも会えるところに住んでいます。

でも、名古屋出身の安藤弁護士は、親や兄弟や古くからの友達と会おうと思っても、簡単に会うことはできません。

そんなこともあって、私が考えるのは、おこがましいことかも知れませんが、「安藤さんに北海道に来て良かったと思って貰いたい」というのが、この10年間、ずっと心のどこかにあります。

 

安藤弁護士は、弁護士登録した期は同期ですが、年齢は安藤弁護士の方が私より4歳、年上です。

安藤弁護士は、もともとシャープ株式会社に勤めていて社会人としての経験を持っていました。私よりも年上なので、私が思いつきで「ああじゃないですか。こうじゃないですか。こうしましょうよ。いや、やっぱりこうしましょう。こうするのが間違いないと思います」などと勝手なことを言い出しても、いつも一段上の目線で意見を言ってくれ、いつも大人の対応をしてくれます。

私は、ときに思い込みが激しい部分もあり、自分がこうと決めたらこう進んで、他人の意見は関係ないみたいなところがあるのですが、安藤弁護士から言われたことに対しては、「安藤さんが言うなら一度考えてみるか」と冷静に考えることができます。

そして、大抵は、その後、「確かに安藤弁護士が言ったとおりだな・・・」となることばかりです(笑。

 

共同経営は上手くいかないことが多いと言われます。

ですが、人間が一人でできることは限られています。共同経営の利点は沢山あります。

これは、共同経営者に対してではなく、同じ組織に所属する全てのメンバーに対しても共通することですが、常に相手に感謝することを忘れずに、相手を信頼して、尊敬するといった関係性を維持できれば、素晴らしいことの方が多いと思います。

あと、共同経営の場合、上手くいっても、下手を打っても、その原因は必ずそれぞれにあるのだと思います。

くれぐれも「上手くいったことは自分の手柄、下手を打ったときは相手のせい」といった勘違いはしてはならないと、常に心に留めて過ごしているつもりですし、今後も忘れずにいたいと思います。

逆に「上手くいったことは相手の手柄、下手を打ったときは自分のせい」くらいになれると更に良いのだとは思いますが、人間はそれほど単純ではありませんので、そうなれるように人間力を高めるべく、日々、精進していきたいと思います(笑。

 

セミナーにて

 

 

9.仕事の信条

 

最初に弁護士になろうと思ったときから一貫して抱いているのは、「目の前の暗い顔をした人を明るい顔にしたい」という想いでした。

そこから「世の中にあるべき一つでも多くの笑顔を増やす」ということを自分の信条としています。

事務所のメンバーもそうですし、クライアントもそうですし、1人だけで生きている人はいないと思いますので、1人が笑顔に変われば、その笑顔はどんどん伝播して拡がっていくような気がしています。

 

また、事務所のことで言えば、私は自分の知名度がどんどん上がって「自分が売れっ子弁護士になりたい」と思ったことはなく、ずっと一貫して変わらないのは「世の中から高い評価を受けるチームの一員でありたい」といった想いです。

要は、個人で勝負したいというよりは、チームで勝負したいといった感覚です。

完全な人間はいないわけで、それぞれが、それぞれの良さを持っています。そんな、それぞれの良さを認めて、それぞれの良さを高めていって、足りないところは補い合えば良いのだと思います。

そのような感覚を持ち続けて、これまでずっと、やってきましたし、これからも変わらないと思います。

何かを成し遂げたとしても、1人で成し遂げるよりも、苦楽を共にして信頼しあえる仲間と成し遂げた方が、分かち合う喜びも格段に増えると思うからです。

今は、事務所の弁護士も徐々に増えてきて、日々、まさに苦楽を共にしているので、事務所に在籍している年数はバラバラですが、皆、掛け替えのない仲間ですし、これからも切磋琢磨しながら、支え合いつつ、一丸となって、より高いところを目指して頑張っていきたいと願っています。

 

 

 

 

10.これから向かう先

 

 

(1)最先端の企業法務領域

 

アンビシャス総合法律事務所の特徴の1つは、地方都市にある法律事務所でありながら、最先端の企業法務領域への対応を志向し続けているという点にあります。

北海道でも、個人的に最先端の企業法務領域に対応されている先生はいらっしゃると思いますが、複数名の事務所で事務所全体として取り組んでいる事務所は少ないのではないかと思います。

そのため、自分たちの強みであるこの分野は引き続き高めていきたいと思っています。

最近、クライアントから相談を受ける内容も、ブロックチェーン、IOT、AI、仮想通貨、シェアリングエコノミー、インバウンドやアウトバウンドの国際取引など、相談を受けるビジネス領域は世の中の動きに応じてどんどん変わっていっています。

顧問先の中には、これまで世の中に存在しなかったサービスを提案している企業もたりしますので、それらの分野の法務対応も日々進化しています。

そのため、これらの分野でも、東京や大阪の法律事務所に負けないような知識と経験と情報を貪欲に蓄積しながら、当事務所のクライアントを中心とした北海道の皆さまに提供していきたいと考えています。

 

最先端の企業法務となると、それまでそこに携わっていらっしゃらなかった弁護士の方がいきなりその分野をやろうとすると、ビジネスの仕組みから勉強して、経験を積んでいかなければならなくなります。

新しい書物や論文も読み続けなければならなくなりますし、情報収集も続けていかなければならないので、弁護士にとっても、結構大変ですし、面倒なことです。

わざわざそれをしなくても、今抱えている依頼者の方の案件、事故、離婚、相続、などの世の中に多く存在する相談事に対応しているだけでも、従来型の法律事務所として成り立つと思います。

評判が良ければ、その種の案件で手一杯となりますから、敢えて新しい分野に苦労して取り組む必要はないのだと思います。

そのため、最先端の企業法務の分野には、相当変わった人か、使命感を持ってやっているかのどちらかじゃないと敢えて取組んでいかないのではないかと思います。

それでも、私たちは敢えてその分野を深めていこうと日々研鑽を積んでいます。

そう考えると、変わった人たちの集まりなのかもしれません(笑。

 

 

(2)使用者側の労務対応

 

もう1つは、当事務所では、今年からの新たなチャレンジとして、これまでよりも積極的に、企業の労務問題の対応に関する知識や経験や情報を提供し、対応の幅を拡げていきたいと思っています。

現在、政府が「働き方改革」を掲げていることもあり、今後も「働き方」や「仕事」というものの捉え方自体も変わっていく可能性がある分野だと予想しています。

会社は社団であり、社団は人の集まりです。会社が健全に存続し、着実に成長していくためには、そこに関わる人が幸せであり続ける必要があります。

ですので、そのための制度設計や運用に関するアドバイスに力を入れていきたいと思っています。

この分野に関して、2018年から当事務所に入所された澤井利之弁護士は、もともと社会保険労務士として20年近く業務を行ってきた経験を有しつつ、弁護士資格も取得しており、当事務所の新しい強みです。

 

北海道全体でみたときに、札幌圏では、弁護士との接点も持ちやすいのですが、それ以外の地方では、まだまだ企業法務を専門としている弁護士との接点を持ちにくいと実感していますので、札幌圏以外への活動領域も徐々に拡大しながら対応を進めていきたいと思っています。

これまでの人数と体制では、ご相談頂いても十分に対応できていないことも多々あったのですが、ようやく人数と体制も整ってきましたし、電話やSkypeやGoogleハングアウト等を活用しつつ、札幌以外のエリアにも対応していけるようにしていくことは可能だと思います。
地方には、知識が無いことで従業員労務に関する必要な施策をできていない会社が本当に多いように思います。

それは、ただただそういった知識を得る機会が無かったことが原因だったりしています。

それをお伝えすることができれば、法に則った従業員の労働環境の整備や、働く方が幸せを感じることができるような福利厚生制度の整備をできるようになるのだと思います。

それを他にやっていらっしゃる方がいるのでしたら、私たちがやる必要はないと思いますが、今はまだ、他にそういう取り組みをされていらっしゃる方が少ないのではないかと感じていますので、そこへの取り組みを強めて行きたいと思っています。

当事務所の強みは、「企業法務の領域で、北海道の他の法律事務所が対応していない、又は十分に対応できていない分野に対応できる」といった点ですので、そこを伸ばしていこうと思っています。

札幌以外の地方の会社で「近くにそういう弁護士がいなくて、仕方がないから東京の弁護士さんに依頼する」という会社がまだまだ多くいらっしゃいます。

それに応えていかなければならないといった使命感を持っていますが、私たちも限られた人数しかいませんので、無理しすぎることなく自分たちの届く範囲で対応していければと思っています。

 

 

(3)プロボノ活動

 

アンビシャス総合法律事務所では、各弁護士に対して、日々の企業法務以外に、各自で興味のある分野を見つけて、プロボノ活動を行うことを励行しています。

プロボノ活動というのは、報酬を行って行うのではなく、無償で行うボランティア活動みたいなものです。

何をやるかは人それぞれですが、アンビシャス総合法律事務所に所属する各弁護士には、報酬を貰って対応する以外に、弁護士だからできる公益的活動を是非取り組んで頂きたいということを伝えています。

 

弁護士は、1日24時間、全ての体験が自分自身の血となり肉となります。

そのようにして、世の中のモノの見方や、世の中の出来事を学び、経験則を高めていかなければなりません。

法律に関する知識以外の部分をいかに広められるかというのは、それぞれの弁護士の成長にとって、無くてはならない重要な要素です。

 

そのため、私自身も、2009年から参加させて頂いている「一票の格差訴訟」や2015年から参加させて頂いている井上税務会計事務所が主催している「LGBTフレンドリー活動」に取り組んできました。

 

 

 

個人的に、企業法務といった日常業務の他に、「個人の幸福追求」や「法の下の平等」の実現といったテーマをライフワークとして掲げていまして、そんなことにも自由に取り組ませて頂けて、幸せを感じています。

 

大きな組織や大事務所では、プロボノ活動をやりたいと言っても、色々な制約があって完全にフリーハンドで取り組むのは簡単ではないと思います。

アンビシャス総合法律事務所はまだまだ規模が大きくありませんので、自分たちの信念だけに従って運動に参画することができますし、是非、他の弁護士にも、そのような環境を活用して頂きたいと思っています。

 

これらは基本的に無償の活動ですので、日常業務の時間をやりくりしながら対応しなければならないので大変ですが、引き続き、それらの活動も頑張っていきたいと思います。

 

 

11.起業を目指す方へのアドバイス

 

具体的な売上の計画もなく起業し、多くの方々から支えられて、ようやく今があるので、偉そうにアドバイスをできる立場でもないのですが、役割なので一言だけお伝えさせて頂きます。

 

起業しようとしている人には「やりたいこと」があると思います。

ビジネスの側面だけで捉えると、「儲かる」「儲からない」とか「できる」「できない」ということだけで、一歩前に進むか否かを判断しがちですが、そういったことを取っ払って、やはり「やりたいこと」を追求して欲しいと思います。

 

そこを追及していきながら、仲間に夢を語っていけば、そのうち必ず誰かが儲かる方法をアドバイスしてくれたり、できる方法をアドバイスしてくれたりすると思います。

1人だけでできることは限られていると思います。

ですので、信頼できる人を探しながら、仲間を集って、「これをやりたい!」といった想いを忘れることなく、一歩前に進んで頂きたいと思います。

そうしているうちに、必ずそれを支援してくれる人が見つかると思いますし、そのような人々の活動が、1人でも多くの人が笑顔で過ごせる明るく豊かな社会の実現に繋がっていくことを願っています。