16水野 晶仁 氏 第2章 WEBディレクション 【株式会社ギアエイト 代表取締役】

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水野 晶仁 氏


株式会社ギアエイト
https://gggggggg.jp/

代表取締役

略歴
2008年 1月 創業
2009年10月 法人化

事業内容
Webサイトのデザイン・コーディング及び構築
(WordPress・MovableTypeを利用したCMS構築)
インターネットを利用したマーケティング戦略の立案、及びコンサルティング
インターネットによる広告業、広告代理業、及び販売促進に関する企画の代理業
CI/VI 企画 グラフィックデザイン他


 

 

6.海外展開

 

5期目から6期目になったところで売上が2倍近くまで伸びました。

8千万円の売上が1億5千万円になったんです。

 

6人で1億5千万円の売上ですから、利益がでました。

現金がしっかり留保できたので、積極的に人材を増やしたり、海外への事業の展開を積極的に仕掛けるようになりました。

これが2013年~2014年にかけてのことです。

 

上海の仕事が2009年に終了してからは、国内の仕事に集中するために海外への展開をやめていました。

ドバイや上海で海外の現状を見てきていたので、いつか海外にとはずっと考えていました。

 

 

 

 

売上が伸長したタイミングと、自分が海外にまた出ようと考えたタイミングが合致して、2014年の夏にチェンマイにオフィスを作りました。

これが海外事業のスタートです。

タイのビザ発給緩和が促進された年で、タイ国際航空というナショナルキャリアのバンコク―札幌便が、それまでの週2便から毎日就航に変わった年でもありました。

 

倍以上に就航便が増えるので、北海道にもタイ人がたくさん来ます。

そこで「タイ人に向けたサービスをやりたい」と考え始めました。

 

日本語もそうですけど、タイ語も世界的にはマイナーな言葉。

例えばスイスに行ったときに日本語を見かけたら、めったに見ないのですごく感動したりしますよね。

ちょっと変な日本語だったりはするんですけど(笑)

 

タイ語ってすごく難しくて、僕も相変わらず読めない。

札幌の街中でも中国語と英語とハングル文字は割とよく見かけますが、タイ語ってあんまり見ないですよね。

これから北海道にもタイ人がたくさん来るようになるのに、タイ人にとって観光インフラが整っていないという状態は、観光都市を目指す都市としてはどうなんだろうか、と考えたわけです。

であれば当社が得意分野としているインターネットを利用して、タイ人の方が北海道に旅行に来る前にタイ語で北海道の情報を見ることができるようにしたい。

さらに実際に北海道に来てからも、北海道での観光の情報を見ることができるようにして旅行を楽しんでもらいたい、と。

 

英語や中国語で作っても良いんですが、それは大手企業さんがやるんだと思うんです。

そうすると当社のような会社では勝てないので、いかにニッチな分野をやるか、という意味でもタイ語のものをやるのがいいんです。

 

針の穴を通すような市場を狙っていく、というのがキーワードです。

タイでのビザの規制緩和、新千歳空港とタイの航空便の便数が増えたこと、タイが新興国から中心国になってきているタイミング、それらが重なってこの仕事を進めるに至っているんです。

しかも、僕自身がタイという国に一生住んでもいいな、と思えるほど好き。

 

いろいろな方に海外展開するときのポイントはどこにあるかというお話をお聞きしました。

 

すると「市場の規模」とか「インフラ整備の状況」とか「デザインに対する感度が高いか」とかいうことよりも、最終的に「自分がその国に住んでもいいと思えるかどうか」というところを最終のジャッジポイントにしたほうが良いよ、とみなさん言っていたんです。

 

まさにそうだな、と思いました。

今やインターネットなんてどこの国でも使えるので、住みたいところに住んで仕事をしたほうがいいよな、と。

じゃあタイだ、となった(笑)

 

それから「タイで仕事をしたい」と色々な方にお話ししていたら、経産省の方からお電話をいただいて、「タイから帰ってきた若者がいるんだけど一緒に食事しませんか」と言われたんです。

もちろん「ぜひ」と願いして食事に行きました。

 

2013年のことです。

 

そこには大学の先生や、市議会議員の方など10人ほどの方々がいらっしゃいました。

僕は居酒屋で気軽な飲み会かな、と思っていたので驚きました(笑)

席の順番などもしっかり決まっていて。

 

その場でタイから帰ってきたその若者、梅木と出会い、すぐに意気投合しました。

会食に参加しているみなさんも「この若者を採用してくれるなら私たち全員でしっかりフォローします」と言うんです。

そしてその場で急に翌日に北海道情報大学の土曜講座で僕と梅木の二人で講演することになった(笑)

タイから留学生が来ているから、彼らにインターネットの現状について話してあげてほしいということでした。

梅木にはその後すぐに当社に入社してもらい、今ではタイの現地法人の取締役をしてもらっています。

 

 

入社後、梅木は「カバン持ちでもなんでもやります」というので、2年弱ほどは本当にカバン持ちをやってもらって、実際の僕の仕事を隣でずっと見てもらいました。

 

2014年にタイのチェンマイにオフィスを作りました。

 

現地法人がまだなかったので日本からのブランチ、という位置づけで個人登録してスタートしました。

 

そこから現地での法人設立の準備を始めて、2016年8月にバンコクに現地法人を設立しました。

チェンマイは市場規模が小さいので、チェンマイのオフィスも残しつつ、法人としての本拠地はバンコクにしたんです。

 

今はまだ現地の日系企業さんからの仕事が多いんですが、あくまでも現地で仕事を受託して経営しています。

タイに進出している日系企業さんって7千社から8千社ほどあるんです。

その方々に対して、Webのマーケティングやソーシャルメディアでのプロモーションのビジネスを展開しています。

 

将来的にはタイだけではなく、いろいろな国で展開したいと考えています。

そうすると仕事の交換や、人材の交流・流動性を持たせることができるようになります。

今のような、この国ではこの従業員、この国の仕事はこの国の従業員が、という考え方を無くすることができるではないか、と思うんです。

 

一つのプロジェクトを、ディレクターはタイ人でデザイナーは台湾人、システムエンジニアはベトナム人で、映像のディレクターはマレーシア人、プロモーションやリレーションはシンガポール人、というような超多国籍でお客様企業のサポートをしていく、ということがしたい。

そうすれば、ブランディングやデザインやマーケティング全般を多角的に見ることができるようになるんではないか、と思うんです。

 

以前東南アジアのある大手企業で10年以上仕事をしてきている方とお話をする機会がありました。

その方が日本に戻ってきたときに、「撮影の現場とかミーティングの場所に日本人しかいない。

10人いて10人全員が日本人しかいない、という状況が気持ち悪く感じた」というお話をしていて。

 

みんな同じ格好をして、みんな同じアジェンダを見ながら、だれも声を発することもなく会議が終わっていく、という場を気持ち悪く感じた、と言うんです。

 

海外で仕事をしている人ってそういう違和感を感じるんだ、と知りました。

日本に住んでいると、そのことに違和感は感じないんですけど。

東南アジアでは映像を作ったりテレビCMを作ったりするときには色々な国から人が集まってきて作るんです。

みなさん片言の英語と自分の国の言葉で話をするので、現場はカオスになってる(笑)

それでもアウトプットされてくるものには、面白いアイデアが入っていたりするんです。

 

結局コミュニケーションの能力って言語だけじゃないと思うんです。

特にクリエイティブの仕事をしていると、パソコンの画面を見せて「こういうデザインがいいんだよ」といえばそれが言語になる。

映像でもジェスチャーを交えて「こういう動作にしたいんだ」といえば、そのボディランゲージが言語になるんです。

コミュニケーションって、口から発する言葉や紙に書いた文字以外でも可能なんですよね。

 

 

ゆくゆくは台湾、インドネシア、フィリピンとかでも展開していきたいと思っています。

ラオスやミャンマーなどの新興国にも展開していきたいです。

早めにそういった国に出て行って、場を温めておきたいと思っています。

 

 

 

7.起業して大変だったこと

 

起業してから本当に大変だった時期は最初の半年だけでした。

もしかしたらそれ以外にも失敗をしてきたのかもしれないですけど、鈍感だから気づいていないだけなのかも(笑)

 

割と慎重にやってきたというのもあるかもしれません。

 

 

 

 

8.自社メディア

 

2015年の4月にTrippino HOKKAIDOというメディアを作りました。

タイに進出して現地法人を作るきっかけになったのは実はこのメディアを作ったこと。

2014年にチェンマイオフィスを作って、2015年にタイ人向けのTrippino HOKKAIDOを作ることを経て、2016年に現地法人を作った、という流れです。

起業してから大きく冒険したのはこのTrippino HOKKAIDOを作ったことくらいなのでは思います。

 

 

 

Trippino HOKKAIDOに関しては、よく「国のから助成金などを受けて作ったんですか?」とか「どこかの会社から受託して作ったんですか?」と聞かれるんですけど、これは自前で作ったんですよね。

すると「制作費はどうしたんですか?」とも聞かれますが、自社の貯金から出しました。

「これは北海道や札幌市から助成金などを受けたほうが良いですよ」と言われます。

でもそういう助成などを受けてしまうと、期限が設けられたり、自分たちの発想で自由にできなくなってしまう。

あくまでも自己資金で自由に作るメディアにしていきたいんです。

行政の力を借りるのは良い面もたくさんあるんだと思うんですけど、ある程度ゆるく自由にやりたいので、このサイトについては行政との連携はしないでやっていくつもりです。

 

 

 

 

 

9.経営の考えかた

 

当社の仕事はディレクション業務です。

スタッフはディレクターが多いですが、コミュニケーションの取り方は結構密にやっているほうかもしれません。

ディレクターは1つのプロジェクトを運営するときの中心人物。

プロジェクトの中心となってコミュニケーションを円滑にしてプロジェクトを進めることが必要になります。

社内にディレクターが沢山いるので自然にコミュニケーションが増えて、会社自体が円滑に動くようになっています。

 

もともと僕は一つの案件や一つのプロジェクトをディレクションしていましたけど、今の僕は会社をディレクションしているというポジションになっています。

ディレクター経験が会社経営に生きているんだな、と感じます。

 

世の中には面白くない仕事というのも沢山あります。

でもそれを如何に面白く見せるか、というところが多分ディレクターや会社をマネジメントしている人の役割なんじゃないかと思うんです。

「この仕事、ただの流し込みだからつまんないよな」とは言いません。

この仕事の面白みはこういうところで、この仕事をすることで従業員のキャリアのどういうところに繋がっていくかとか、売上だけじゃなくて会社にとってどういった経験になっていくのかという話をスタッフに伝えます。

この仕事の意味はここにあるし、全部楽しいって思ってもらえるような風土や雰囲気づくりを大事にするようにしています。

 

 

 

 

 

10.起業して良かったこと

 

会える人の幅が広がったことは本当に良かったと思っています。

 

特に経営者の方々と会えること。

食べ物も同じだと思うんですけど、高級フレンチしか知らないよりも、吉野家の牛丼から高級フレンチまでを知っている人のほうが選択肢が広がりますし、色々な話もできます。

幅広く色々な人たちと会う機会は、独立してから圧倒的に増えました。

偉い人たち、凄い人たちだけじゃなくてそれ以外の色々な人たちとも会えるチャンスが増えていったので、それだけ話のネタも広がりました。

起業して本当によかったと思えることですね。

 

 

 

11.自己分析

 

自己評価が的確にできているんじゃないかと思っています。

自分の評価を的確にできていれば、自分が弱い分野とかダメなところを補ってくれる人を探して採用することができるようになります。

 

そうすると会社として強くなるし、マイナスになっている部分もゼロからプラスに転じさせられるようになります。

 

自分を過大評価も過小評価もせず、適切に評価できているんじゃないかと思っています。

 

絶対弱みを見せずにギラギラしている経営者の方もいらっしゃいますけど、そういう方にお会いしたら「すごいな」と思います。

と同時に「すごく疲れそう」とも思ってしまいます(笑)

 

僕は逆で、自分のできないところや弱いところをしっかり理解して、隠さずにそれを補ってくれる従業員を雇用する、という考え方。

 

僕はゆるくやっているんですが、そのほうが仕事や情報が集まりやすい、というのもありますね。

自分はなるべく情報を受け取れるような状態に自然になっているんだと思います。

 

僕は自分のことを、仕事をしていなければ社長にみえない人間だと思っています。

仕事をしていなくても「社長っぽい人」っているじゃないですか。

僕は多分、仕事を離れたら社長だとは思われないと思っています(笑)

 

とにかく気張らない、というようにしています。

そうすると若い人も年配の人も気軽に声を掛けてくれますし、同年代の人も飲みに誘ってくれます(笑)

その結果面白い情報が沢山集まってきますから。

 

 

 

 

 

12.起業を考えている人へのアドバイス

 

これは僕、結構色々なところで言っているんですけど。

スタートアップとかベンチャーのことを、「お金を調達して沢山の人を雇用して、見たこともないプロダクトを作って世の中にインパクトを与える。

それをとんでもない金額でバイアウトして、また新しいビジネスをやる」みたいなことだと思っていると、起業すること自体がめっちゃ辛くなりますし、ハードルが上がってしまいます。

 

僕は、まず周りにいる人たちを「どう幸せにできるか」「どう気持ち良いと感じてもらうか」ということが起業のポイントなんじゃないかと思っています。

自分の周りの人たちに向けたサービスってどういうものがあるのか、と考えてそこに注力すると、良いものができます。

 

今の時代はテレビやエアコン、洗濯機というものができた時のように、それまで無かったものを作って売る、ということではないと思う。

昔のように便利なものがほとんどない時代だったら、それを発明して作ってしまえば売れたんです。

でも今の時代にはその「もの」がほとんどできているので、まだ世の中に無いものを考えて作る、というのが難しくなってきています。

でも無いものを作るのではなく、在るものをいかに良くしていくか、を考えることは可能だと思うんです。

 

機能過多にしすぎず、極端にファストファッションにも寄せすぎずに、自分が使っていて気持ちいいとか愛着を持てるものを作っていく必要があると思うんです。

そういうことって、壮大な夢を持って誰も考えたことの無いような物を作るんではなくて、自分のすぐ周りに目を向けて考えることが近道なのではないかなと思っています。

 

近所のおばあちゃんが困っていることを解決してあげる、とか。

自分の親戚の子供がこうだから、どうしてあげるとか。

まず身近なところからアイデアや発想は実は生まれてくるんだと思っています。

 

自分の周りの「困った」を解決してあげるための起業っていうのが、一つの方法としてある。

 

多分先進的なものを開発した人たちも、だれかが困っていることを良くするための一つの方法、でしかなかったはずなんですね。

それがデザインされたりブランドとしての価値がついたりして、周りの人たちも「そういうのがあったら便利だね」という思いが伝播していって、商品やサービスが成就していく。

例えば「ペットボトルのキャップが開けにくい」とか「シールをはがすのが面倒くさい」とか、そういう小さいところから始まって、最終的に素晴らしいプロダクトが成就していくんだと思うんです。

 

起業の一つのかたちは、「世の中のみんなに使ってもらう商品やサービスを開発すること」ではなくて、「小さくてもいいから周囲の人の問題解決をしてあげること」。

そう考えてみると踏み出しやすいんじゃないでしょうか。