14齊藤 隆 氏 第2章 コワーキングスペース【株式会社シェアデザイン 代表取締役】

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齊藤 隆 氏


株式会社シェアデザイン
http://sharedesign.biz

代表取締役

略歴
2013年1月 設立
2013年3月 クリエイティブラウンジシェア オープン

事業内容
コワーキングスペースを通じて地域活性化に関わる事業を行なっております。
コワーキングスペース運営。
ものづくりシェア工房運営。
シェアスペース開発。
子供向けイベント開発。
札幌市特定創業支援事業者。


札幌でコワーキングスペースを開設して5年。国内、国外にまで認知されるようになっています。

この回では、今後の展開と、起業についての考え方をお聞きします。


3.体を壊して

 

【アルバイトを採用】

 

先ほども言いましたが、最初の開業費用は借入をせずに全て自己資金で賄いました。

前職の退職金です。

若い時からの貯蓄や、投資していたものがありましたのでそれらも切り崩しました。

今となっては借入をせずに自己資金で開業したことが良かったと思います。

お金を全額仮入れていたら継続できていなかったと思います。

 

「半年後にはもう無くなってしまうかもしれない」と思ってから本気になったのですが、

自分たちが毎日ここにいないと収入がない状態が続きました。

朝10:00開店で夜9:00まで営業していますから、その時間、毎日ここにいなければいけない状態です。

先ほどお話ししました通りイベントで収入を得ていましたから、毎日必ず夜までいる必要がありました。

さすがに途中で体調を壊しまして、その時にこれはこの形で続けることができないなと思い始め、妻とも相談しました。

 

「このままでは二人とも倒れてしまうよ」

 

そこで2013年の10月に初めて女性のアルバイトさんを雇用しました。

 

実はこの会社が今ここにあるのは、その彼女がいたからだと思っています。

というのも、その彼女がつい1年前までここで働いてくれていたんですが、時給も最低賃金でしかお支払いできなかったので、当時はもういつ辞められてもおかしくない状況でした。

それでもその女性は3年ほどここで働いてくれていたのです。

何度も言うようですが、その彼女がいなければ僕らはもう駄目だったかもしれないです。

その女性の人柄で多くのお客様を呼んでくれました。

それがすごく大きかったですね。

僕が毎日カウンターに立っていたらお客様はどんどん減っていっていたと思います。

また、この場所の趣旨をとても理解してくれていいて、この場所の特徴やコワーキングスペースの意味を分かりやすくお客様にご説明してくれたり、自分からお客様に話しかけてくれたのがとても良かったと思っています。

 

 

 

【反省】

 

僕も未熟で、初めのころはそれが普通だと思ってしまっていたのですが、今、その女性がいなくなって初めてそういった人材を探すのは難しいことだと気づきました。

 

先ほどお話ししたイベントや大人の部活動だけではなく、本来のコワーキングスペースとしての利用者の方をどんどん繋いで呼んでくれていたのです。

 

1年ほど前に事情によりその女性が辞めることになってしまってから、アルバイトであってもしっかりと入社してもらわなければだめだな、ということに気づきました。

 

人のありがたみを知りましたし、僕自身が「人を使ってやっている」という感覚でいてはいけない、ということに気づきました。

 

その女性が退職してから、何人かの人を採用しましたが、その時に採用した人は今は誰も残っていません。

それは、当時僕が「使ってやっている」という感覚を持っていて、それがどこかに出てしまっていたからなんだと思っています。

そうして何人かが辞めてしまって色々なことに気づきました。

給料は仕事に値する分を正しく支払わなければいけない。ですとか、働いてくれる人に対してこちらもしっかりと感謝をしていかなければいけないという当たり前のことに、です。

 

コワーキングスペースっていうのは単なる場所貸しの商売ではないんですね。

レンタルオフィスと違って、コミュニティがあって、スタッフがいて、「人」と「人の感情」がそこに存在して成り立っている場所なんです。

その「人の感情」がないと単なるレンタルオフィスですから。

ということは、私やスタッフもお客様に対しての対応だけではなく、自分たちスタッフの中でも人と人との対応をしていなければいけない、と今すごく痛感しています。

 

 

 

4.札幌市の特定創業支援事業

 

4年前、札幌市の中で創業者を増やすための支援グループの一つとして選んでいただきました。

ここを2013年にオープンしたとき、経済産業省が発行している「METI Journal」という雑誌で「コワーキングという新しい働き方」というテーマで当社が特集を組まれて掲載されたんです。

当時、コワーキングスペースは東京にも大阪にも沢山あったんですが、何故か当社が選ばれまして。経済産業省の政務官の方がここへ来られて1時間ほどお話をさせていただきました。

その雑誌に掲載された後は、全国から視察の依頼が沢山ありました。

九州からいらっしゃった方もいました。

 

当時僕は、日本で一番最初に「コストをかけずに安くお洒落な雰囲気があるコワーキングスペース」を作ってやる、と思ってここを作ったのですが、視察に来られた方が、帰られて地元で作られたコワーキングスペースがこのスペースと似たような雰囲気になっていったことは、非常に嬉しかったです(笑。

 

話がそれましたが、その後、当社のことを知った札幌市の方から連絡があり、「札幌市の活動に参加してほしい」とのことで依頼があり、札幌市の特定創業支援事業者となることができました。

 

 

 

5.これから先

 

【新たな企画】

 

コミュニティスペースというのは正直言うと決して大きな利益を生むわけではない、ということが分かりました。

 

そうはいっても「ここがなければ困る」と言われる場所にはしたいと思っています。

 

そのためにこの場所を利用した新しい企画を常に検討しています。

今、この場所を利用してくださるクリエーターさんたちと多くかかわっています。

クリエーターさんたちの中にはあまりお金に余裕がない方々もいらっしゃるんですが、

そういった方々でもこの場所を使ってもらえるような企画を考えていきたいと思っています。

 

 

【海外からの依頼】

 

先日、海外の会社から、その国で弊社のビジネスモデルを展開したいと協力の依頼が来ました。

これは正直、今回のお話をいただくまで考えたこともないことでした。

日本には全国に数多くのコワーキングスペースがあるので、「何故、弊社なんですか?」とお聞きしました。

そうするとその会社のご担当者の方から「日本中のシェア工房を調査したところ、最も地域に根差して活動しているから」との回答をいただいたんです。

東京でもコワーキングスペースやシェアオフィスを展開しているところは沢山あるんですが、地域と密着して動いているところってあまりないと思うんですよ。

海外の人なのに良く知っているな、と感心するほど調査しているんですね。

驚きました。

話がそれましたが、どこか違う地域で当社のビネスモデルでコワーキングスペースやシェア工房の展開をすることになれば、これは嬉しいです。

今はまだどのように進んでいくかは未知数ですが、直近での新しい動きの一つです。

海外の文化の違う人たちが、同じような活動をしていたらうれしいですよね。

 

 

 

 

 

6.起業を考えるきっかけ

 

僕の父親は7人兄弟の末っ子です。

僕が子供の頃から、うちはあまり裕福ではなかったんです。

父の兄たちは全員自分で会社をやっている社長だったんですが、僕の父だけ会社員だったんです。

その叔父たちを小さなころから見ていました。

叔父たちはみんな社長なので社長さんらしい我の強い人ばかりでした。(笑

うちの父親だけが優しい感じの人でした。

お正月などで親せきが集まる中で、その当時は子供ながらに自分がみじめに感じてしまっていたんです。

今は思ってないですけどね。

今は「裕福ではなくても優しくてよい家庭を持つ生きかたもある」と思っています。

それで、小さい時から「自分は社長になる」と決めていて、小学校の卒業アルバムにまでそう書いていました(笑。

いつか叔父さんたちに負けないように自分で会社を作って見たい、と思っていたんですね。

小学生ながらに何も知識もないのに、とりあえず社長になってやる、みたいに思っていました。

つい先日叔父の一人が亡くなって、葬式で親せきが集まったときに久しぶりに叔父の皆さんとお話をする機会がありました。

父の兄弟はその時点ですでに3人ほどが亡くなっていました。

生きている叔父たちも、すでに退職したり会社をたたんでいるんです。

そこで叔父たちから「今お前なんの仕事してるんだ」と聞かれました。

僕は「やっと社長になったよ」と答えたんです(笑。

そしたら叔父たちは「社長か!どんな仕事だい?」と聞かれたので、詳しく説明してもわからないので「貸事務所みたいなことをしているよ」と答えました。

「そうか。でもニトリの方がいいんじゃないのか?」

なんて言われて(笑。

そうやって叔父たちと話しているとときに、昔の子供の頃の気持なんかを思い出しましたね。

小学生の時の通信簿には「現実的で負けず嫌い」と書いてありました。

親からもそう言われていました。

夢物語なんかは一切語らず、常に「でもこうだよね」と言ってしまうような子供でした(笑。

 

 

 

 

7.起業して後悔したことはありますか

 

 

後悔はないですね。

 

これからするかもしれませんが(笑。

全ての仕事が楽しくてここまでやってきた感じがありますから。

 

 

8.起業して良かったと思うこと

 

いろいろありますけど、まず自分のことを知ってくれている人が増えていることです。

 

これが一番大きいです。

 

あとは妻と仲良くなったことですかね(笑。

 

会社員の時は朝8時に家を出て、深夜に帰ってきてという繰り返しです。

子供のことから家のことまで全部妻に任せていました。

休みの日などあってないようなもので、あったとしても家族そっちのけで仕事をしている、という感じでした。

何度か喧嘩したこともあります。

それでも、妻に「起業してこの仕事をやりたいんだ」と相談したとき、彼女は反対しませんでした。

もちろん何年か前から妻には「仕事を辞めたいんだ」ということは話していました。

 

妻も昔から裁縫をやっていたり、ものづくりが好きだったことも影響しているかもしれません。

僕が「こういうことをやりたい」と話したときに、やっと本当の意味で妻と繋がることができたというか、そういう感じになったことを覚えています。

妻との間のすごく大きな変化でした。

 

起業前はあまり雰囲気の良くない夫婦だったのですが、今は変わって、お互い良いパートナーとして仕事をしています。

 

そこは起業して良かったと思っているところのひとつです。

 

 

9.起業する人へのアドバイス

 

【時代の変化】

 

僕なんかアドバイスできるようなことをしていないですが。

でも一つ言えるのは、「就職=会社に所属する」という選択肢だけの時代はもうすぐ終わると思っています。

そうなると何が起きるかというと、普通の人は会社に勤めないと仕事ができないので、会社が人を雇用しない時代がくると、「収入が得られないという人」がどんどん増えてくると思うんです。

今のうちに副業でもなんでもよいので自分一人でできる仕事を作っておいた方が絶対に良いと思います。

そういうときに当社のようなこの場所がある、ということを思い出してください。

会員さんの中にも「いつか会社を辞めたい。でもまだ辞めることができないので副業で仕事をしています。」という人も結構いらっしゃいます。

近い将来には多くの人が副業を持つのだと思います。

政府も副業を推進し始めていますし、日本では人口がどんどん減っていく中で毎年数万社という会社がなくなっているという状況もあります。

 

僕は、学校を出て会社に就職する、というものが常識でなくなる時代が来ると思っています。

 

その時、「自分には何ができて、そのことが世の中でどのように役に立てるのか」ということをもう一度多くの人が考えるべき時に来ているんじゃないかと思います。

会社に言われて仕事をするのではなくて、自分のできることを世の中に提供して自分で仕事を作っていく、ということを多くの人にやっていってもらいたいと思っています。

 

僕は5年後にはそういう時代になっていると思っているんです。

 

「起業したい」と思ったなら、自分ができることを考えて、それが人の役に立つことなのかどうかをしっかり考えて、役に立つことなのであればそれは自分の「仕事」にするのです。

 

 

 

 

10.幸せとは何か

 

会社に使われていると、収入はある程度安定しますからお金は貯まるとは思いますが、幸せは貯まらないと僕は思っています。

 

今の僕は、お金はないのですが幸せは貯まっています。

 

どっちが幸せですか、ということです。

 

人生は長いです。

 

一生会社に使われて生きていくより、お金はなくてもお金がないことを感じないくらい幸せを得ている方が良い、と僕は思っています。

 

僕は大学を出て会社で17年働いてから起業して、やっとこのことに気づきました。

このことを今の若い人たちに伝えたい、教えてあげたいんです。

 

できるだけ若い時に「自分のできる仕事」を見つけてほしいと思っています。

 

会社に所属することに向いていないのに、それ以外の方法を知らないがために会社員をしている人ってたくさんいると思います。

 

コワーキングスペースにくると、いろいろなスキルを持った人がいるので、自分でできないことはここへ来てできる人に頼んでしまうことができます。

 

僕自身もこの店を始めてから、そうやって仕事をしてきましたから。

 

僕は自分にできないことは、ここへ来ているできる人に頼んじゃう(笑。

そうすると、その人にとっても収入になるし経験にもなるし、僕もできないことを解決できるので。

 

多くの人がお互いに仕事をシェアすると、会社や組織って必要ないですよね。

 

そういう人が増えてくれたらよいな、と思っています。